
らんちゅう飼育を始めるとフィルター選びで迷う場面が必ずやってきます。
ホームセンターで手軽に買える投げ込み式フィルターいわゆる「ぶくぶく」だけで果たして十分なのか、それともより強力なフィルターが必要なのか。
この疑問に対する答えは、飼育する環境や匹数、そして飼育スタイルによって変わってくるというのが正解です。
投げ込み式フィルターがらんちゅうに向く理由
らんちゅう飼育では、水槽・プラ舟を問わず「投げ込み式スポンジフィルター」が多く愛用されています。
その理由は、スポンジに定着したバクテリアによる高い生物ろ過能力にあります。
スポンジを飼育水が通過することで、有害なアンモニアなどを効率よく分解してくれるため、らんちゅうに適した水質を維持しやすいのが特徴です。
投げ込み式フィルターの最大の特長は、水流が穏やかであることです。
らんちゅうは金魚の中でも泳ぎが下手な品種で、ずんぐりとした体に小さなヒレという構造から水流に流されやすく、水流に勝てない分だけストレスを受けて、流された結果として身体に傷がつくこともあります。
上部フィルターや外部フィルターに比べて水流がはるかに弱い投げ込み式は、この観点でらんちゅうとの相性が良いといえます。
さらに、スポンジによって水中のゴミをキャッチする物理ろ過とスポンジに定着したバクテリアによる有機物分解・無害化を行う生物ろ過の両方ができ、エアレーションの効果もあり、価格も安価に抑えられるのもスポンジ式投げ込みフィルターの特徴です。
エアレーションと水質管理が同時にできる点は、シンプルな管理を好む愛好家にとって非常に使いやすいポイントです。
生物ろ過の立ち上げに時間がかかる点を理解する
投げ込み式フィルターを使いこなす上でもっとも重要なのはバクテリアが定着するまでには時間がかかるという点を知っておくことです。
フィルター本来の生物ろ過の力が発揮されるまでには、およそ2ヶ月ほどかかります。
バクテリアがしっかり住み着くと水の透明度や質が驚くほど安定しますが、そこに至るまでには準備期間が必要です。
そのため、水槽を立ち上げたばかりの時期にフィルターの性能だけに頼り切るのはおすすめできません。
セットアップ初期は、水換えの頻度を増やすことで水質をサポートしてあげましょう。
フィルターのスポンジにバクテリアが十分に定着するまでの間、丁寧に水換えを繰り返しながら、環境が整うのをじっくり待つことが大切です。
スポンジのメンテナンスが水質に直結する
スポンジが汚れて目詰まりしていると効果が落ちます。
ある程度バクテリアを残す程度に洗いますが、水道水で洗うのはNGで、排水する飼育水でもみ洗いするようにします。
バクテリアは水道水のカルキで死滅してしまうため、フィルターの洗浄は必ず飼育水を使うことが鉄則です。
また、病気で薬や塩を使う時はフィルターを使用しないほうが良く、水道水でよく洗い乾かしておくと病気や嫌な菌が死にます。
このように投げ込み式フィルターはメンテナンスが簡単な反面、適切な洗浄タイミングを外すと水質維持の効果が大幅に下がります。
スポンジの汚れ具合を定期的に確認し、ごみが詰まる前に洗浄することが、フィルターの性能を保ち続けるうえで欠かせません。
投げ込み式だけでは限界がある状況もある
ただし、投げ込み式フィルターに全てを任せるには限界があるケースもあります。
投げ込み式フィルターは簡単に導入できるのですが、ろ材の量が少ないためバクテリアの定着量が他のフィルターに比べると少ないです。
金魚は全般的に糞の量が多い魚なので、出来る限り多くのろ材を使用して確実な生物ろ過を得ることが必要です。
生物ろ過がきちんと機能しないとアンモニアや亜硝酸などの毒が高濃度になり、水質変化に強い金魚と言えども命の危機にさらされてしまいます。
特に60センチ水槽で複数匹を飼育する場合、スポンジフィルター1台では物理ろ過・生物ろ過ともに不足しがちです。
60センチ水槽であれば投げ込みフィルターを2個使うか、大型のフィルターなら1個でいけるという考え方もあります。
飼育匹数や容器の大きさに合わせてフィルターの台数や規模を調整することが必要です。
水換えと組み合わせることで初めて成立する
らんちゅう飼育において忘れてはならないのが、投げ込み式フィルターだけに頼るのではなく、定期的な水換えとセットで考えるという発想です。
水換えは飼育環境により頻度が変わりますが、コケや魚・水の状態などを見て3分の1から2分の1の水量を適度に行い、水温の高い夏場は頻度を上げる必要があります。
水換えは水質維持とミネラル分の補給の意味でも重要です。
特に夏場は水の痛みが速く、水温が30度を超える時期は汚れる前に水換えが鉄則で、水が綺麗そうに見えても底に汚れが蓄積することがあるため、足し水だけで底洗いをしないと病気を呼びます。
投げ込み式フィルターで生物ろ過を補助しながら、こまめな水換えで硝酸塩などの蓄積を抑えていくスタイルが、らんちゅう飼育では現実的で多くの愛好家に支持されているやり方です。
フィルターを使わない選択肢もある
もうひとつ知っておきたいのは、ベテランの中にはフィルターをまったく使わずに飼育する人も少なくないという事実です。
屋外のプラ舟で青水管理をしながら頻繁に水換えを行うスタイルでは、そもそも機械的なフィルターを必要としません。
水替えは1週間に1回程度で、基本的にろ過装置は入れず、エアレーションのみという飼育スタイルも愛好家の間では行われています。
この場合、バクテリアの助けを借りた生物ろ過は期待せず、水換えによる物理的な水質リセットで管理します。
フィルターがない分、薬浴や塩水浴の際に気を遣う必要がなく、管理がシンプルになるという側面もあります。
ただし、頻繁な水換えに対応できる時間と体力、そして水換えのたびに水温や水質を慎重に調整する経験と技術が求められます。
飼育環境に応じた現実的な判断をする
結論として、投げ込み式フィルターだけで水質を保てるかどうかは「飼育条件次第」という答えになります。
少数飼育・十分な水量・こまめな水換えという条件が揃えば、スポンジ式の投げ込みフィルター1台でも安定した飼育は十分に可能です。
一方、多めの匹数・室内飼育・水換えの頻度が限られる場合は、フィルターを2台以上用意したり、バクテリア剤を併用したりすることで補完するのが賢明です。
大切なのは、フィルターの能力を過信せず、水の状態を日々観察して変化を見逃さない姿勢を持ち続けることです。