らんちゅうの飼育でなぜベテランはガラス水槽を使わないのか?

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らんちゅうの飼育でなぜベテランはガラス水槽を使わないのか?

らんちゅう飼育に興味を持った方が最初に揃えようとするのは、ほとんどの場合、観賞魚コーナーに並ぶガラス水槽です。

透明で見やすく、インテリアとしても様になる。そう思うのは当然のことです。

ところが、長年らんちゅうを育ててきたベテランの愛好家やブリーダーたちは、ガラス水槽をほとんど使いません。

品評会を目指すような飼育者に至っては、ガラス水槽を選ぶ人はほぼいないと言っても過言ではありません。

そこには、らんちゅうという魚の特性と飼育の目的から生まれた明確な理由があります。

らんちゅうは「上から見る魚」として改良されてきた

そもそもらんちゅうという品種は、横から鑑賞することを前提に改良されてきた魚ではありません。

江戸時代から昭和にかけて、金魚の飼育は池やタライといった上から見る容器が主流でした。

らんちゅうはまさにその文化の中で長い年月をかけて洗練されてきた品種です。

背中のなめらかなラインである「背なり」、頭部に発達した肉瘤とフンタンのバランス、上から見たときの体のシルエットの美しさ。

それらすべてが上見を前提に磨き上げられてきた特徴です。

ガラス水槽は横から眺めることが基本の構造になっているため、らんちゅうが本来持つ美しさを最大限に引き出すことができません。

ベテランが水槽を選ばない根本的な理由のひとつはここにあります。

水深が深すぎることで体形が崩れる

ガラス水槽のもうひとつの大きな問題は水深です。

一般的なガラス水槽は高さが30センチ以上あるものが多く、らんちゅうにとってその水深は深すぎます。

水槽の場合水深が比較的深いため、らんちゅうが上下方向に泳ぐことで、姿がイマイチきれいになりません。

専門家の方たちは冬場や真夏など気温の影響がきつい時期以外は飼育池の水深を15センチ程度にして、あまり上下方向に動かないようにしています。

水深が浅いほど上下の移動が少なくなり、背中のラインが緩やかに保たれます。

特に水深を浅くすると運動量が減り、尾びれが上に美しく反り上がるので、より美しく育ちます。

また、らんちゅうなどの水圧に弱い魚は水位の高い水槽だと負担がかかってしまいます。

深い水槽で育てることは、らんちゅうの美しさを損なうだけでなく、体への負担という点でも望ましくないのです。

フィルターの水流がダメージを与える

ガラス水槽で飼育する場合、水質維持のためにフィルターが必要になります。

しかしここにも問題があります。

らんちゅうは金魚の中でも泳ぎが下手な品種で、ずんぐりとした体に小さなヒレという構造から水流に流されやすく、水流に勝てない分だけストレスを受け、流された結果として身体に傷がつくこともあります。

上部フィルターは物理ろ過には優れていますが、落水の勢いが強く、らんちゅうに適した弱い水流を維持するには調整が必要です。

外部フィルターは高価なうえ、高さの低い専用水槽には構造的に合わない場合があります。

らんちゅうの肉瘤も水流が強すぎると形が崩れる原因になりかねません。

プラ舟での飼育ではエアレーションのみで水流を最小限に抑えることができますが、ガラス水槽ではそのような管理がしにくく、常に水流との兼ね合いを意識しなければならない状況が続きます。

日光が当たらず発色が上がらない

ベテランたちがガラス水槽を選ばないもうひとつの大きな理由が、日光の問題です。

らんちゅうは室内飼育よりも屋外飼育に向いており、室内ではオレンジ色のままですが、日光を浴びせると美しい赤色に発色しやすくなります。

しかし、ガラス水槽は室内に置かれることがほとんどで、窓際に設置しても屋外の直射日光と同等の光量は得られません。

室内というのは屋外に比べると光の強さが圧倒的に弱いため、どうしても色が薄くなってしまいがちです。

品評会で評価される深く濃い紅色は、屋外での十分な日光浴なしにはなかなか実現できません。

長年育ててきたブリーダーほどこの差を肌で知っているため、自然と屋外のプラ舟やFRP容器を選ぶようになるのです。

水面積の狭さが成長と発育を妨げる

ガラス水槽やアクリル水槽は、ある程度育った二歳以上の魚を飼うには良いですが、当歳魚を飼い育てるには不向きです。

水槽は水面積が狭すぎて泳ぎが活発にできなかったり、体は大きくなるのですが胴の発育と頭の発達がバランス良く育たないためです。

らんちゅうの美しさは体全体のバランスにあり、頭部の肉瘤や胴の厚みを適切に発達させるためには、十分な水面積を持つ広い容器での飼育が不可欠です。

また、らんちゅうは大食漢で糞の量が非常に多い魚です。

水量が限られるガラス水槽では水質の悪化が速く、頻繁な水替えはらんちゅうにとってストレスになったり、急激な水温や水質の変化で体調不良や病気の原因になったりするというジレンマが生まれます。

これはガラス水槽の容積では抜本的に解決しにくい問題です。

底が明るいと色が薄くなる

ガラス水槽の底は透明であることが多く、光を通します。

水槽の底面が明るいとらんちゅうが保護色の反応を起こし、体色が薄くなりやすいとされています。

水槽の底がキラキラ光っているよりも落ち着いた底のほうがらんちゅうのストレスが軽減され、色落ちも少なくなります。

水槽の底が光って明るいと保護色で色が薄くなります。

黒いプラ舟が選ばれる理由のひとつもここにあり、暗く落ち着いた底面と壁面がらんちゅうの発色を助けるのです。

初心者には水槽から始めることも選択肢

ベテランが水槽を使わない理由をすべて並べたとしても初心者がすぐに屋外のプラ舟飼育に移行する必要があるかと言えば、一概にそうとは言えません。

プラ舟やFRPの場合は飼育スペースがどうしても水槽より広い面積を用意する必要があり、毎日の飼育作業の手間も考えると飼育用品が充実している水槽から始めたほうがその後の飼育がやりやすいという利点もあります。

水槽はガラス越しに魚の状態を細かく観察しやすく、病気の早期発見という点では優れています。

飼育の目的が「鑑賞を楽しむこと」にあるのか、「品評会での評価に応えるほどの個体を育てること」にあるのかによって、最適な容器の選択は変わってくるのです。

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