
らんちゅうを飼っているとある日突然、体表や鰭に白い粒が現れていることがあります。
これが白点病です。
金魚の病気のなかでも特に発症頻度が高く、初心者から経験者まで多くの飼育者が頭を悩ませる厄介な病気です。
ネットや飼育書には「水温を上げれば治る」という情報が散見されますが、これは本当なのでしょうか。
正確なメカニズムと正しい対処法を理解しておくことが、らんちゅうを守るうえで非常に重要です。
白点病の原因は何か
白点病は、ウオノカイセンチュウ(学術名:イクチオフティリウス・マルチフィリス)と呼ばれる繊毛虫の一種が魚体に寄生することで発症します。
この白点虫は原生動物の繊毛虫に分類され、ゾウリムシと近縁な生物で、成虫の大きさは直径0.5mm程度の円形または楕円形をしており、周囲を繊毛と呼ばれる細かな毛で覆われています。
ウオノカイセンチュウは25℃以下の低水温を好む性質があり、水槽などの閉鎖的な環境下では魚体に集中的に感染することで魚が衰弱あるいは機能障害をきたすため問題となります。
自然界においては集中的に寄生することがほとんどないため、寄生自体が問題を引き起こすケースは稀です。
したがって、魚の密度が高いほど、また小型の水槽ほど感染のリスクが高くなります。
また、水槽に移入した直後や水温・水質の急激な変化に基因するストレスによって体表の粘膜が荒れているときは特に感染しやすいため、らんちゅうを新しく購入した直後や季節の変わり目には特に注意が必要です。
たとえ水槽内にウオノカイセンチュウが存在していても金魚が健康であれば発症しないこともあります。
魚が健康であるためには、適切な水温と水質で保たれた環境が必要です。
白点虫のライフサイクルを知ることが重要
白点病の治療を正しく行うには、白点虫がどのようなライフサイクルで増殖するかを把握しておく必要があります。
白点虫は「仔虫が魚に寄生 → 真皮に侵入して成長 → 成虫になり離脱 → 強い膜をつくり、その中で増殖 → 仔虫が生まれる」というサイクルを繰り返します。
このライフサイクルが非常に早いことが白点病の進行を速める原因であり、1個の成熟虫が24時間以内に数千倍にも増えてしまいます。
白点病の原因となるウオノカイセンチュウは幼虫の時に魚に寄生し、成虫になると離れていきます。
そして分裂・増殖してまた魚に寄生するというサイクルを繰り返しており、一旦離れたように見えても水槽内で生きていればまた寄生し、その数も増えていきます。
この仕組みを理解していないと白い点が消えたから治ったと勘違いして治療を中断し、数日後にさらに多くの白点が再発するという事態に陥りやすくなります。
水温を上げることで何が起きるのか
では、「水温を上げると白点病が治る」という話はどこから来るのでしょうか。
これには一定の根拠があります。
ウオノカイセンチュウの適正温度は20度前後とされており、水温が上がるとウオノカイセンチュウの成長サイクルが速まります。
薬浴の薬効が効くのはウオノカイセンチュウのシストの状態のみであり、成虫になっている白い点には薬は効きません。
そのためその成長サイクルを速め、早く体表から白点を剥がし、シストの状態にして薬でやっつけるというのが白点病治療の論理になります。
つまり、水温を上げると白点虫の成長が早まり、寄生から離れるまでのサイクルも早くなり、薬の効果が早く出るようになるということです。
白点病の治療に有効な水温は28〜30℃ですが、急に水温を上げると魚の負担になりますので、1日1℃を目安に少しずつ加温していきましょう。
水温上昇だけで「治った」ように見える理由
では、薬を使わず水温を上げただけで白点が消えるケースがあるのはなぜでしょうか。
白点病の初期であれば水温を上げるだけで治癒することもあります。
ただこれは、治癒と言っていいのか白点虫が休眠に入っただけなのかは判断がつきませんが、結果的に白点病の症状が出なくなるので、治癒と言えるでしょう。
しかし注意が必要です。
水槽内の水温が高ければ、自然とウオノカイセンチュウが全滅してしまう可能性もありますが、根治できないと白点病はほとんどの場合で再発します。
自然治癒したと思っていたら、数日後に無数の白点がついてしまうこともあるので、自然治癒には期待しないほうがよいです。
水温を上げるだけでは不十分な本当の理由
水温の上昇はあくまで魚から白点虫が離れるサイクルを早めるために行うもので、高水温で白点虫を駆除できるわけではありません。
加温しただけでは治療にはなりませんので、必ず薬浴と合わせて行ってください。
特にらんちゅうは体形的に体力を消耗しやすく、丸い体型ゆえに水中の酸素消費量も多い魚です。
白点虫が大量に寄生した状態を放置すれば、体力低下から二次感染を招くリスクも高まります。
発見が遅れたり症状が中程度以上に進んでいたりする場合は、水温管理だけでは到底対応しきれません。
適切な薬浴の方法
白点病の治療には、メチレンブルー系またはマラカイトグリーン系の魚病薬を用いた薬浴が基本となります。
治療薬はメチレンブルー水溶液やアグテン、ヒコサンZなどがおすすめです。
白点病はしつこく、1匹が発症したら水槽ごとを薬浴させ、機材の殺菌を行いましょう。
ろ材は交換するか、耐熱性がある素材なら60度程度のお湯で殺菌します。
薬の選び方についても触れておくとアグテンはマラカイトグリーンシュウ酸塩を主成分とし、白点病や尾ぐされ病、水カビ病などに有効な治療薬です。
メチレンブルーよりも短期間で治療が終わることがメリットで、水換えの手間を考えると効率がよいでしょう。
ただし、アグテンは28度以上の高水温では使用できません。
メチレンブルーは水に浮遊している白点虫に付着し、光が当たることで発生した活性酸素が白点虫を駆虫します。
ただし真皮の中や膜の中の白点虫には駆虫効果はありません。
設置条件によりますが、約5〜7日間で薬効が低下します。
薬浴中は活性炭入りのフィルターを外すこと、エアレーションを必ず行うことも忘れないようにしてください。
薬効成分が活性炭に吸着されてしまうとせっかくの治療が無効になってしまいます。
体の白点が消えてもまだ目に見えない仔虫が寄生している場合があるので、油断せずに数日は様子をみてください。
重症化すると治療が難しくなりますので、早期発見・早期治療を心掛けてください。
白点病を繰り返さないための環境管理
白点病は治療できる病気ですが、再発を防ぐことのほうが長い目で見ると重要です。
水換え時や季節の変わり目などで水温が急激に下がると増殖しやすくなるので、加熱ヒーターなどを利用して水温維持に気を配りましょう。
新しい金魚を自分の水槽に迎える場合は、メチレンブルー剤でのトリートメントを行うことが重要です。
らんちゅうも例外ではなく、新しく購入した個体はすぐに本水槽へ入れず、別の容器で1〜2週間ほど様子を見てから合流させるのが安全です。
ウオノカイセンチュウは水温が25℃以上になると活動が鈍ります。
そのため、26℃以上を保つことでウオノカイセンチュウの活動を抑制し、水替え頻度を上げることで魚に寄生する前に水槽内から除去できます。
ただし、らんちゅうは本来15〜25℃前後を好む金魚ですので、高水温を長期間維持することには無理があります。
季節に応じた適切な水温管理と定期的な水換えによる水質維持が、最大の予防策と言えるでしょう。